話が前後してしまったが、今月初めにバレエを観た。ミハイロフスキー劇場の「海賊」。ルジマトフがコンラッドを演じるのにも興味があったし、久しぶりのサラファーノフを観たかった。しかもアリ。
仕事帰りで間に合うか不安だったけど良い席が安く手に入ったので行くことにした。 バレエって主催者にも依るでしょうが、幕が開いてしまったら中へ入れてもらえないことが多いから平日はある意味賭け。 幸い今回は余裕で間に合った。席も事前に調べたよりも遥かに舞台が近くて双眼鏡が邪魔なくらい。その約一週間の東京ドームでスクリーンですら見づらかったのとは大違い。こんな席で見るのと一番上の5階席では全然違うという当たり前のことが実感として沸き上がる。特に全幕物は装置や衣装が豪華だし、コールドバレエの華やかさも迫力も息遣いさえ聴こえてくる。実際、ルジマートフの声、気合いみたいなものが何度か聞こえた。前だとこういうプラスアルファがあるのねって初めてわかった。たまには頑張っていい席で観ようと決意させてくれるような席だった。
肝心のバレエだけど今まで観た海賊に比べて結末が中途半端だった気がする。誰版だったかみていなかったけど今まで見たどれとも違う気がした。。ルジマートフが演じたためか、今までで一番貫禄と見せ場のあるコンラッド、そのせいかサラファーノフのアリが若々しいけど見せ場が少なくなってしまった気がしたのが残念。 それでもあれだけ前で観ることができたことに満足した夜だった。
実は文化会館で前の席に座ったことがある。何かを見る為ではない。2011年3月12日、あの震災の翌朝だ。帰宅難民になって偶然入って前の方の咳に腰掛けてみたけれど、改めて事態の大変さを最初に実感した場所でもある。残念なことだけど確かにあの時のことは少しずつ掠れてきているのは事実。それでも私はここへ来ると思い出すし、そうでなくてはいけないと思う、そんな夜でもあった。