我が家のあんずが開花した頃、「ウェディング・シンガー」を観にシアタークーリエへ行った。
「SHOCK」など早々と公演中止を決める中、暗く寂しい日比谷の街を歩きながら、公演を続けることもまた大変な選択だなと思った。
私が劇場に着いた時も窓口で払い戻しをしている人もいた。
シアタークーリエに入るのは今回が初めて。客席に座って劇場全体を見渡してこのくらいの規模だから上演が可能だったのかも、と思ったりもした。
もちろんそれなりの派手なセットや電飾はあるけれど、心なしかステージのライトが全般的に暗く感じられた。元々そういう演出なのか、あるいはこのような状況だから、初めて観たのでよくわからない。
80年代という私がもっとも傾倒していた頃のアメリカが舞台の作品なだけあって出てくる話や人物が懐かしい。こういうアメリカンな作品は最近久しく観ていなかった。
この作品を観るのにためらっていた理由の一つはヒロインの上原多香子ちゃんにあった。元SPEEDとはいえ、彼女の歌唱力は信用していなかった。が、思ったよりも良かった。少なくとも芸達者な共演者の中にあってちょっと頼りない素人っぽさも、今回のキャラに限って言えば合っていたように思う。
主演の井上芳雄さんは帝劇で演じているキャラよりも軽妙でダンスの切れもいいし、スリムで長い手足も舞台映えがして、魅力的。それにカーテンコールでの挨拶も含めて座長としての風格も感じられた。
大澄賢也さんは今回が初めて観たかもしれない。ダンスはわかっていたけど、歌や芝居があれだけできるとは正直思っていなかった。失礼ついでに言えば、あのキャラもぴったり?
樹里咲穂さんは「SHOCK」以来宝塚時代も観てきたけれど、男役よりも女優が似合うなってつくづく思う。すごく生き生きしていた。歌う時の目線とかが男役って感じでそれがまたかっこよかったりする。
その他、出演者のみなさんいずれもレベルが高く、楽しませて頂いたが、やはり初風諄さん!私の中では未だにマリー・アントワネットの貫録やアリアが残っているけれど、1幕での歌のあの深く豊かなソプラノは圧倒的。2幕でのお茶目さもさすが!確か退団後、お嬢さんを宝ジェンヌにしてからの女優デビューだったと思うが、ブランクを感じさせない。さすがだ。
クーリエのせいかチケット代が高めなのはつらいけれど、ステージがすごく近く感じられ、役者が客席の通路を通る時の近さは日頃2階席後ろで観ている者にとっては魅力的。ミーハーついでにいってしまうと、終演後ロビーに立って儀援金を募っている時、他の役者さんの箱に入れた後、思わず井上くんを見上げたら目があったような気がして会釈したら彼も会釈を返してくれた。
こんな時に不謹慎かもしれないが・・・
しばらくは難しいかもしれないが、再演されたら今度はいつもの友人を誘って行く価値のある作品。早くそんな状況になって欲しいと願う。
観に行った頃は開花だった我が家のあんずはこの週末でほぼ満開になった。
例年、この花が終わる頃、首都圏では桜が開花する。
こんな状況でも花は咲くのだなって癒され、勇気づけられる。
剛くんの歌う日本の美しさ、守っていきたい。
逆に勇気づけられもする。